工学・建築に関する学術雑誌の比較!専門誌も紹介

ここでは工学や建築分野を対象とした論文が掲載される学術雑誌をいくつか挙げ、また後半では同分野における論文ではなく実務的な内容が掲載されている専門誌について紹介していきます。

工学・建築に関する学術雑誌

日本機械学会論文集

日本機械学会論文集

「日本機械学会論文集」とは、日本機械学会が発行している学術雑誌です。
日本機械学会の会員は、機械に関わる研究者や技術者、学生、法人会員などによって構成されており、正会員27,000名、学生会員7,000名、その他の会員も含めて合計で35,000名以上の規模の大きな団体です。1897年に創立されて120年以上の歴史があります。
機械・機械システムに関する研究を行っており、計算力学部門、バイオエンジニアリング部門、材料力学部門、機械材料・材料加工部門、流体工学部門、熱工学部門などの22個にもなる部門を設置し、関連する分野を幅広くカバーしています。
「日本機械学会論文集」には、機械工学全般を取り扱う総合誌と専門分野の英文誌の8種類があり、日本機械学会学術誌の他にも、「日本機械学会誌」「機械技術専門図書」など、出版物も多く存在しています。
最近では、例えば「列車の単線並列運転を支援する軌道の分岐構造の開発」「海洋温度差発電の基礎発電特性」「傾斜した角溝内を転がる楕円体の反復的衝突運動」などの論文が掲載されています。
https://www.jsme.or.jp/

日本教育工学会論文誌

日本教育工学会論文誌

「日本教育工学会論文誌」とは、日本教育工学会が1年に4~5回発行している学術雑誌です。
日本教育工学会は、教育工学をという学問を人文社会学や理工学、その他の関連する様々な分野を融合した学問として捉えて研究を行い、最近では情報化の発展と教育工学も重要なキーワードとなっており、研究領域はさらに広がっています。
和文誌である「日本教育工学会論文誌」以外にも、英文誌の「Information and Technology in Education and Learning」を教育システム情報学会と共に合同学術誌として1年に1回発行しています。バックナンバーについては和文誌・英文誌ともにJ-STAGEにて電子版が閲覧可能となっています。
「日本教育工学会論文誌」には例えば、「小学校プログラミング教育に対する教員の意識調査に基づく促進・阻害要因モデルの検討」や「対話型鑑賞のファシリテーションにおける情報提供のあり方」「大学生のためのスマートフォン行動嗜癖の自己評価尺度の開発」などといった論文が掲載されています。
https://www.jset.gr.jp/

電気学会論文誌

電気学会論文誌

「電気学会論文誌」とは、一般社団法人電気学会が月に1度発行している学術雑誌です。
電気学会は、1888年に創立されて130年にもなる歴史の長い学会です。伝統のある団体ではありますが、常に革新を求めて研究活動を行うことを目指しており、時代とともに変化する電気工学について、情報やエレクトロニクス、エネルギー、環境など、研究分野の拡大にも努めています。会員数は22,000名を超えており、研究者、技術者、学生、大学や企業の関係者が研究を進めています。1991年より、多様化する電気工学を専門領域に分けて部門制度を採用したことで、学会の研究調査活動や発表、論文誌の発行をより柔軟にできるようになりました。現在は部門別に5つの「電気学会論文誌」を発行しており、論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)、論文誌B(電力・エネルギー部門誌)、論文誌C(電子・情報・システム部門誌)、論文誌D(産業応用部門誌)、論文誌E(センサ・マイクロマシン部門誌)に分けられています。
「電気学会論文誌」には例えば、「針状ボイドにおける放電電荷分布の位相角解析(論文誌A)」や「再エネ普及シナリオに基づく長期的な太陽光・風力発電導入価値変遷の分析(論文誌B)」「転移学習と知識蒸留による少数学習データのためのDNN学習法(論文誌C)」などといった論文が掲載されています。
https://www.iee.jp/

日本建築学会論文誌

日本建築学会論文誌

「日本建築学会論文誌」とは、日本建築学会が発行している学術雑誌です。
日本建築学会は、1886年に創立されて130年以上、建築学及び関連分野の研究調査を行っています。研究機関や建設業、設計事務所、公社公団、建築材料メーカー、学生など、35,000名の会員がいます。全国に9つの支部及び36の支所を設置して、各支部・支所で活動しています。
日本建築学会が発行する学術雑誌は全部で6つあり、「日本建築学会構造系論文集」「日本建築学会計画系論文集」「日本建築学会環境系論文集」「日本建築学会技術報告集」「Journal of Asian Architecture and Building Engineering(JAABE)」「Japan Architectural Review:International Journal of Japan Architectural Review for Engineering and Design(JAR)」です。さらにこれらに加えて、優れた論文として選ばれたものを「作品選集」という形で掲載し発行もしています。
「日本建築学会構造系論文集」「日本建築学会計画系論文集」「日本建築学会環境系論文集」の3つについては、1936年に創刊されて以降、毎月発行されている月刊誌です。「日本建築学会技術報告集」は、創刊は1995年で1年に3回発行されています。「JAABE」は、2002年に創刊、発行数は定めがなく、採用された論文が順次掲載されて発行されます。「JAR」は2018年創刊で最も新しいもので、1年に4回発行されます。「作品選集」は1年に1回発行されます。
最近の論文では、例えば「大変形弾性板のトポロジー最適化(構造系)」や「ファミリーホームの生活実態と空間構成に関する基礎的調査(計画系)」「再生可能エネルギーを利用する分散型マルチソース・マルチユースヒートポンプシステムの開発(環境系)」などの論文が掲載されています。
https://www.aij.or.jp/

日本ロボット学会誌ロボ學

日本ロボット学会誌ロボ學

「日本ロボット学会誌ロボ學」とは、日本ロボット学会が発行している学術雑誌です。
本学会設立と同時に創刊されて、現在は1年に10号が定期的に発行されています。発行から1ヶ月経過したものについては、J-STAGEにて電子版を閲覧可能となります。
日本ロボット学会は1983年に設立、その後1991年に社団法人へ移行、さらに2011年には一般社団法人へと移行し現在では約4000名ほどの会員数を抱える学会になっています。当学会では「日本ロボット学会誌」以外にも英文論文のみを掲載した「Advanced Robotics」、その他各種テキストも出版されています。
「日本ロボット学会誌ロボ學」には例えば、「ローラ駆動される球体の運動解析」や「把持のロバスト性解析に基づくケージング拘束の定量的評価」「ヒトの作業特性に基づく複数ステップ力制御の最適化」などの論文が掲載されています。
https://www.rsj.or.jp/

化学工学論文集

化学工学論文集

「化学工学論文集」とは、化学工学会が発行している学術雑誌です。奇数月に隔月で発行しています。
化学工学会は、化学に関連する研究者、エンジニア、教育関係者、事業関係者などによって構成されています。生態系・地球について諸問題を抱える社会のために、化学工学にできることは何なのかという考えのもと、研究活動を行っています。
2020年度は、社会と化学工学会、人材育成・人材活用、イノベーションと社会の3つの視点を重点的に掲げて研究を進めています。
部会制度を導入し、それぞれの研究領域の質を高め、大会での議論がより深いものへと実現できています。部会制度は、化学工学の基盤を対象とした基盤技術分野と、基盤技術の応用・展開とされる展開技術分野の2つの分野に分類されます。基盤技術分野には、基礎物性、粒子・流体プロセス・熱力学などを含む6つの部会が存在し、展開技術分野には、バイオ、超臨界流体、エネルギーなどを含む8つの部会が存在しています。
これらの研究成果である「化学工学論文集」には例えば、「Level Set法を用いたフィルター上の微粒子積層解析」や「静止流体中を上昇する楕円体液滴の抵抗係数」「二段メタン化反応器の熱的自立化によるCO2メタン化プロセスの高効率化」などといった論文が掲載されています。
http://www.scej.org/

工学・建築に関する専門雑誌

bmt

 bmt

「bmt(ベアリング&モーション・テック)」とは、メカニカル・テック社が発行している隔月刊誌です。様々な産業での事例を紹介しながら技術を解説している総合情報誌で、開発から試験、評価、技術、設備管理までの一連を幅広く取扱って掲載しています。例えば最近の号では、自動車業界と食品加工業界の2つの特集が組まれ、自動車業界では「自動車用エンジンおよび電動パワートレインにおける最新のトライボロジー技術」の記事や、食品加工業界では「食品製造設備における微粒子投射処理の効果」の記事などが掲載されています。
https://bearingmotion.mechanical-tech.co.jp/

O plus E

 O plus E

「O plus E(オープラスイー)」とは、アドコム・メディアが発行している隔月刊誌です。日本国内で唯一の光エレクトロニクス及び画像工学に関する専門雑誌で、これらの分野のスペシャリストと呼ばれる人たちの特集記事や、タイムリーな話題を解説する記事などが掲載されています。
最近の号では、「QoL(クオリティ・オブ・ライフ)向上のためのヒューマンセンシング技術の最先端」という特集が取り上げられ、「パラリンピック選手をサポートする画像処理技術」「レシピ画像を用いた調理映像の自動要約」などの記事が掲載されています。
https://www.adcom-media.co.jp/

機械の研究

機械の研究

「機械の研究」とは、養賢堂が発行している月刊誌です。
「機械の研究」という名称ではありますが、機械工学だけでなく、工学・工業全般とそれらに関連する分野を幅広く取り扱い解説されています。機械工学についての古い概念を脱却し、新しい研究・技術を提供することを目的として創刊された雑誌です。
毎月号の連載講座や専門家の特集記事が掲載され、研究者や工学全般を学ぶ学生、関連する仕事に従事する人など、様々な人達が読める内容となっています。
最近の号で掲載されている記事には、「音をデザインし製品価値を高めるには」「構造保存型離散ナブラ演算子法による定式化」などがあります。
https://www.yokendo.com/

まとめ

同じ工学系でも多様な研究分野がありますので、学術雑誌にも色々とあることが分かったかと思います。関心ある分野の学会を調べて学術雑誌にも目を通してみるといいでしょう。