数学・物理・化学の学術雑誌まとめ!分野別に比較

数学や物理学、化学など、理学や理工を対象とした分野の学術雑誌をここで紹介していきます。
学術雑誌では各学会で投稿された論文等が掲載され、世界の先端的な研究内容、情報を仕入れることができます。市販されている通常の専門誌とは違い、どこがどのような学術雑誌を発刊しているのか、その情報があまり出回っていませんので、ここでまとめていく内容を参考にしていただければと思います。

数学系の学術雑誌

数学

数学

「数学」は、日本数学会が発行している学術雑誌です。
設立された翌年の1947年に創刊されており、現在では1年に4回発行されています。ここには本学会の会員による論文や書評、最新ニュースなどが掲載されており、会員には無償で配布されています。非会員についても電子版が無料で閲覧できるようになっています。また、岩波書店で紙版を購入することも可能です。「数学」に掲載されている論文は、数学に関する研究者・専門家以外の人たちでも理解できるよう執筆されているため、学生や数学に興味のある人々など、どのような人でも気軽に読めるという特徴があります。
また、海外の人々や英文で読みたいという人々については、「Sugaku Expositions」という雑誌がアメリカ数学会より発行されており、「数学」に和文で掲載されている論文を英文にしたものが読むこともできます。
日本数学会はこの他にも、「数学通信」「JMSJ(Journal of the Mathematical Society of Japan)」「ASPM(Advanced Studies in Pure Mathematics)」「JJM(Japanese Journal of Mathematics)」なども発行しています。
「数学通信」は、1996年に創刊された雑誌で、主に学会から会員へ向けた情報提供の場として発行されており、内容は、会報や講演会の記録、会員ニュース、書評などが掲載されています。
「JMSJ」は本学会による欧文誌で、国際学術誌として1948年に創刊されました。本学会の会員はもちろん、非会員による投稿論文についても査読を経たものを掲載しています。Project Euclid やJ-STAGEで公開されています。
「ASPM」は研究集会の報告論文集として1983年に創刊されました。国外では、アメリカ数学会及びWorld Scientific Publishing社によって販売されています。
「JJM」は、1924年に創刊された、国内の数学欧文誌の中で最も古い雑誌です。本学会とSpringer社によって出版されています。JSTのJournal@rchiveにて無料で閲覧できます。
https://www.mathsoc.jp/

日本応用数理学会論文誌

日本応用数理学会論文誌

「日本応用数理学会論文誌」は,日本応用数理学会が発行している学術雑誌です。1991年に創刊されて、1年に4回発行されている電子ジャーナルで、J-STAGEにて閲覧できます。
応用数理学に関する幅広い分野の論文を取り扱っており、原著論文やサーベイ論文など、論文の種類も様々なものが掲載されています。
本学会は数理的イノベーションに応えることを目的として1990年に創立され、2012年に一般社団法人へ移行しました。会員が専門とする分野は、数学、物理、化学、電気・電子、機械、材料、建築、情報処理、通信、計測・制御、システム工学、人間工学、経営などで多岐にわたります。
https://www2.jsiam.org/

物理学系の学術雑誌

日本物理学会誌

日本物理学会誌

「日本物理学会誌」は、日本物理学会が毎月発行している学会誌です。
物理学に関する動向や報告、解説が掲載されています。会員向けの雑誌ではありますが、非会員であっても閲覧できます。
原著論文のみでなく、わかりやすく解説した記事も掲載されるため、物理学を専門とする研究者以外にも物理学に関心のある人々なども理解しやすい内容となっています。
また、英文の「JPSJ (Journal of the Physical Society of Japan)」も発行しています。毎月発行されており、最新の論文については公開から1ヶ月の間無料で閲覧できます。
https://www.jps.or.jp/

応用物理

応用物理

「応用物理」は、応用物理学会が毎月発行する学術雑誌です。
本学会は、1930年頃に東京大学工学部と理化学研究所の間で行われていた応用物理学についての談話会が起源となっています。もともとは議論の場としてのみ設けられていましたが、その後1932年に「応用物理」が創刊され、応用物理学を専門とする学術雑誌としては世界で初めての創刊となりました。
現在では、物理学と工学の接点となる応用物理学の様々なテーマを扱っています。例えば、半導体、光・量子エレクトロニクス、新素材など、時代と共に変化していく課題に取り組んでいます。
応用物理学に関する研究と研究成果をわかりやすく解説した記事や、最近の展望など、会員向けの様々な情報を掲載しています。
また、英文の論文誌「JJAP(Japanese Journal of Applied Physics)」も発行しています。これは、応用物理学に関する全ての分野についての国際的な雑誌で、物理学の理解を深めるための記事や、物理原則の応用に関する論文を掲載しています。研究領域はとても広く、プラズマ物理学やナノサイエンスとテクノロジー、生命科学なども取り扱っています。
https://www.jsap.or.jp/

放射光

放射光

「放射光」は、日本放射光学会が発刊する学術雑誌です。
年6回の発行がなされており、各巻最終号である6号には、その巻の総目次が掲載されます。定価2000円で販売されていますが、日本放射光学会の会員であれば1500円で購入できるようになっています。なお、2015年以前のものについてはオンラインでの閲覧が可能です。
当学会では学術雑誌のほかにもいくつか書籍を発刊しており、一般向けに理解しやすい内容で書き下された本もいくつかあります。例えばブルーバックスの「放射光が解き明かす驚異のナノ世界―魔法の光が拓く物質世界の可能性」などは誰でも手に取って読みやすいものとなっています。他にも放射光の利用者に向けた「放射光ビームライン光学技術入門」という書籍も出されています。
http://www.jssrr.jp/

化学系の学術雑誌

化学と教育

化学と教育

「化学と教育」は、日本化学会が発行する学術雑誌です。
当学術雑誌では話題の研究や技術に関すること、論文などが掲載されます。また化学に関する教育のことも取り上げられますので、教育現場に役立つ情報、例えば実験の紹介などの連載記事も掲載されています。
日本化学会は1878年に創立され、現在約3万人もの会員を抱える国内最大の化学学会であり、「化学と教育」以外の出版物も発行されています。
当学会が刊行する「Bulletin of the Chemical Society of Japan」も論文誌で、1926年に創刊されてから国際ジャーナルとして質の高い論文を掲載してきています。ただしこちらで掲載されている論文はすべて英文となっています。
学会誌として発刊されてきた「化学と工業化学」では日本語で論文が掲載されていましたが、2002年で休刊となっており、過去の論文を閲覧する場合にしか利用できなくなっています。
http://www.chemistry.or.jp/

化学工学論文集

化学工学論文集

「化学工学論文集」は、化学工学会が発行する、化学工学に関する学術雑誌です。
当学会ではこの和文論文誌「化学工学論文集」、そして英文論文誌である「Journal of Chemical Engineering of Japan」も発行しています。いずれの論文誌も基礎から応用まで、化学工学の分野で行われている多様な研究を世界に発信するという役割を果たすものになっています。
具体的には、物性・物理化学、熱工学、流体工学、生物化学工学、医用工学、材料工学、環境、工学教育に関することなどが幅広く取り扱われています。
「化学工学論文集」は1975年に創刊され、隔月の発行がなされています。一方1968年に創刊された英文論文誌の方では毎月の発行がなされています。どちらも電子ジャーナル主体で出版。直近3ヶ月分であればアクセスが会員に限られるといった制限もなく無料で一般公開されています。
また購読している方であれば毎月、その月の4ヶ月前から遡って20年間分を電子ジャーナルで閲覧できるようになっています。それ以前に出版されたものに関しては電子ジャーナルで一般公開されていますので、誰でも見ることが可能です。
http://www.scej.org/

地学系の学術雑誌

地質学雑誌

地質学雑誌

「地質学雑誌」は日本地質学会が発行する月刊の学術雑誌です。
創刊から110年以上経っており、これまで長い間日本の地質学発展に寄与してきました。地質学雑誌では、地質学に関する最新の研究成果の論説、短報等として、研究成果や研究技術のまとめを総説することなどを目的としています。そこで、新規性や一般性に富んだ研究結果や技術、理論、アイデアなどを重視した論文などが掲載されています。
その他、地質学に関連した資源・環境・自然災害・地学教育などに関する研究も当学会では取り扱っているため、その内容が地質学雑誌にも反映されています。
「J-STAGE」にてバックナンバーが閲覧可能です。1巻の第1号から全文無料ですが、最新版に関しては冊子が発行されてから3か月後の公開となります。
http://www.geosociety.jp/

応用地質

応用地質

「応用地質」は、日本応用化学会の発行する学術雑誌です。
かつて年4回の刊行がなされていましたが、平成3年度の第32巻からは年6回体制(基本的に最後の第6巻は特集号となっています)へと年間の発刊数が増え、より多くの最新論文が閲覧しやすくなっています。
他にも平成7年度からは巻頭号が掲載されるように変わったり、平成10年度では40周年ということもあり装いがA4 判化されたりなど、変化を続けている雑誌でもあります。
日本応用科学会では、応用地質学に関する研究者による有機的な連携をもとに、学際的・総合的な調査・研究と技術開発が行われています。学術雑誌「応用地質」でもその活動内容に即した論文等が掲載され、これまで応用地質学に関する研究の推進、技術の進歩普及、そしてこれらを通じた学術の発展に寄与しています。
投稿論文の内容は、応用地質という大きな括りに含まれるものとなりますが、具体的な分野としては、地球科学・天文学、農学・食品科学、ナノ・材料科学、建築学・土木工学なども含まれます。
https://www.jseg.or.jp/

まとめ

理学や理工学に関する学術雑誌を紹介しました。特に数学・物理・化学・地学を研究対象とする学会が発刊するものを挙げましたが、学会の規模が大きく、純粋な学術雑誌だけでなく一般の方でも見やすい雑誌の発刊をしているところも見られました。
研究者やこれから各分野を深く学んでいこうと考えている方は、これらの学術雑誌の購読等をしてみてはいかがでしょうか。