語学・外国語学、文化学や文学に関する論文をまとめた学術雑誌比較

研究者等の作成した論文を目にすることはあまりないかと思います。専門誌であっても論文そのものが掲載されることは少なく、分かりやすく噛み砕いた表現に書き換えられたものがほとんどだからです。
しかし学術雑誌を見れば、そこから最新の研究内容等を知ることができます。世に出回る機会の少ない学術雑誌ですが、ここで語学・外国語学や、文化学、文学などに関する学術雑誌を紹介していきますので、関心のある方は参考にしていただければと思います。

語学・外国語学系の学術雑誌

言語研究

言語研究

「言語研究」とは、日本言語学会が発行している学術雑誌です。
当学会は1938年に創立されてから80年以上も続く歴史の長い学会で、約2,000名の会員が所属しています。
研究領域は一般的な言語学のみならず、方言学、意味論、音韻論、生成文法、言語類型論、文献学など幅広く、日本語の他にも、英語、フランス語、朝鮮語、ウイグル語、アイヌ語などを多岐にわたります。これらの世界の諸言語に対して学術性を重視して、学問的価値に基準をおいて研究を行っています。
「言語研究」には例えば、「言語類型論の観点から見た動詞範疇の相互作用」や「アラビア語チュニス方言における否定と非現実モダリティ」「マヤ語VOS語順への2つの道筋」などの論文が掲載されています。
http://www.ls-japan.org/

中国語学

中国語学

「中国語学」とは、日本中国語学会が発行している学術雑誌です。学会が創立された1946年の翌年1947年に「中国語学」が創刊されました。1949年に一度名称を「中国語学研究会会報」と変更しましたが、1955年には再度「中国語学」に戻っています。また、学会の設立当時は、「中国語学研究会」という学会名でしたが、1978年に「中国語学会」に変更されました。会員数は現在1,000名を超えており、比較的大きな団体といえます。
「中国語学」には、研究成果である論文や、新しく発見された重要な資料の紹介及び解説などが掲載されており、日本語、英語、中国語での論文が認められています。
バックナンバーについては、通常の紙版は内山書店で注文可能で、また電子版はJ-STAGEで閲覧できます。
掲載されている論文には、例えば「山西方言における軽声と語末変調」や「中国語の話題構造について」「点字による漢字表記の必要性と可能性」などがあります。
https://ss1.xrea.com/www.chilin.jp/

フランス語学研究

フランス語学研究

「フランス語学研究」とは、日本フランス語学会が1年に1回発行している学術雑誌です。論文や研究ノート、フランス語学に関連する書籍の紹介などが掲載されています。
発行されて3年を経過した論文については、J-STAGEにて電子版が閲覧可能です。紙版の購入は、フランス図書にて注文できます。
日本フランス語学会は、日本におけるフランス語学の研究の発展を目的とし、会員は200名ほど、フランス語学の研究者や教育関係者によって構成されています。毎月の例会の開催、1年に1度のシンポジウムの開催、学術雑誌「フランス語学研究」の発行が主な活動内容です。
「フランス語学研究」には例えば、「絵画のタイトルにおける言葉の結びつき」や「フランス語の心理・感覚動詞の意味構造と内的経験の認知パタンについて」「法助動詞devoirとpouvoir の陳述に関わる意味効果」などの論文が掲載されています。
http://www.sjlf.org/

自然言語処理

自然言語処理

「自然言語処理」とは、言語処理学会が発行している学術雑誌です。
言語処理学会は、研究領域を音韻論、形態論、構文論、意味論、語用論、記号論、計量言語学、計算言語学、心理言語学、対照言語学、認知言語学、社会言語学などに限定し、研究会での密度の高い議論を実現しています。「自然言語処理」は、言語処理に関する研究成果を論文として掲載しています。1994年に創刊されて以降、25年以上続いており、現在は1年に4回発行されています。掲載される論文は、日本語だけでなく英語による論文も認められています。
掲載されている論文は、例えば「テキスト平易化における語彙制約に基づく難易度制御」や「関係分類における依存木上の重要トークンの自動判別」「抽出型オラクル要約の人手評価」などがあります。
https://www.anlp.jp/

社会言語科学

自然言語処理

「社会言語科学」とは、社会言語科学会が発行している学術雑誌です。
当学会は社会・文化における言語やコミュニケーションについて研究する団体で、社会言語科学研究会が発展して1998年に新たに社会言語科学会が設立されました。
バックナンバーは学会事務局にて購入でき、また、発刊後2年が経過したものについては、電子版をJ-STAGEにて閲覧できます。
「社会言語科学」には例えば、「自閉症スペクトラムの青年と療育者の日常の相互行為」や「一連の連鎖全体を収束させる「へー」」「先行医師への不満と受診の正当化」などの論文が掲載されています。
http://www.jass.ne.jp/

文化学系の学術雑誌

人間生活文化研究

人間生活文化研究

「人間生活文化研究」とは、大妻女子大学人間生活文化研究所が発行しているオンライン上の学術雑誌です。
大妻女子大学人間生活文化研究所は、1981年に家政学系の大学院博士課程の設置にあたって、研究組織を設けるという目的で大妻女子大学人間生活科学研究所が設立されました。その後2008年に現在の名称である人間生活文化研究所に変更されました。もともとは生活の自然科学に注目していましたが、現在は領域を広げて、人間の生活全域を研究対象としています。
「人間生活文化研究」は、人間の生活や文化に関わる論文を掲載しており、その範囲は、生活科学、社会学、心理学、人類学、情報学など、多岐にわたります。紙版の発行はなく、オンラインのみの発行で、いわゆるオンラインジャーナルまたは電子ジャーナルとも呼ばれるものです。J-STAGEにて論文を閲覧できます。
「人間生活文化研究」には例えば、「アパレル商品を購買するマルチチャネルショッパーのリアル店舗内行動の考察」や「中国茶文化における喫茶用水に関する審美意識をめぐって」「情動的関連性の気づき・気づかせの標識としてのOhとAh」などの論文が掲載されています。
https://www.ihcs.otsuma.ac.jp/

多文化関係学

多文化関係学

「多文化関係学」とは、多文化関係学会が発行している学術雑誌で、2004年に創刊以来1年に1回毎年発行されています。
多文化関係学会は、2002年に設立された、多様な文化の相互作用やその関係性を研究する団体です。現代の日本は多文化社会に変化しつつあり、その過程の中で、それぞれ文化が違うことを理由に争いや行き違いが起こることもよくあります。それらの問題の根にある原因を解明し、今後に活かすことを目指して研究が行われています。
最近の投稿論文では、例えば「「新華僑二世」のアイデンティティを探る」や「日本人学生は本当に「内向き」なのか」「言語的・文化的多様性を生きる学び」などが掲載されています。
http://www.js-mr.org/

インターカルチュラル

インターカルチュラル

「インターカルチュラル」とは、日本国際文化学会が発行している学術雑誌です。
日本国際文化学会は、国際社会である現代において起こる様々な問題を国と国との関係とは捉えず、文化と文化の関係と捉え解明していくことを目指し研究を行っている学会です。
国際社会・国際文化の研究者やそれに関連する教育関係者によって構成されています。
「インターカルチュラル」のバックナンバーは、事務局にて注文可能で、その他、株式会社風行社、アカデミア出版会でも購入できます。
掲載されている論文には、例えば「浦上の受難と復興における文化の存続」や「記念碑の細分化がもたらす文化観光の質的変容について」「立ち枯れの木が語るナショナル・アイデンティティ」などの論文があります。
http://www.jsics.org/

文学系の学術雑誌

英文学研究

英文学研究

「英文学研究」は日本英文学会が発行している学術雑誌です。
当学会は、イギリス文学やアメリカ文学など、英語圏の文学及び英語教育を研究する団体で、現在3,000名を超える会員がいる大きな学会です。
和文号「英文学研究」と英文号「Studies in English Literature」を1年に1回発刊しています。バックナンバーについては、和文号と英文号のどちらも電子版で閲覧可能となっており、和文号はJ-STAGEにて、英文号はEBSCOにて閲覧できます。
最近掲載された論文には例えば、「英語の結果構文が示す「非能格性」」や「フレデリック・ダグラスの自伝における書き換え」「ハリウッド、冷戦、家庭― Angela Carter の The Passion of New Eveにおける女性像の構築」などがあります。
http://www.elsj.org/

児童文学研究

児童文学研究

「児童文学研究」とは、日本児童文学学会が1年に1回発行している学術雑誌です。
1962年に設立された日本児童文学学会は、400名ほどの会員で構成されており、その半数以上が女性会員という特徴があります。児童文学及び児童文化の研究を行い、それらの発展を目的としている団体です。1年に1度の研究会の開催や、講演会・展覧会の開催、学術雑誌の発行が主な活動内容です。
「児童文学研究」のバックナンバーは、本学会事務局にて在庫がある場合のみ購入できます。例えば、「児童文化の史的原像」や「童謡勃興期に探る児童文化の原点」「戦時下における児童向け『古事記』の受容と変容」などの論文が掲載されています。
http://www.jscl.internet.ne.jp/

世界文学

世界文学

「世界文学」とは、世界文学会が発行している学術雑誌です。
世界各国の文学に関する研究はそれぞれ個別に行われることが多いですが、それらの個別の研究の中に共通性を認識し、世界的規模で研究を目指すことを目的としている団体です。各国の文化や言語のみでなく、さらに広い視野で研究を行い、自分の専門にとらわれない自由な討論の場として毎年研究例会が開催されています。その研究成果を反映させたものが学術雑誌「世界文学」で、1年に2回発刊されています。掲載されている論文には、例えば「1950年代のビルマ文学と日本占領期」や「夏目漱石とロシア文学」「<ドイツの罪>と戦後-ギュンター・グラス作品に見る<反戦>」などがあります。
http://sekaibungaku.org/

まとめ

以上で語学・外国語学や文化学、文学等に関する論文を掲載した学術雑誌を紹介してきました。無料で閲覧できる論文も多くありますので、気になる方は、特に関心のある領域を扱っている学会を探してみるといいでしょう。