現代の生活文化に深く関わりを持つ要素、生活・服飾・美容を学ぶことは、高度な教養や豊かな感性、視野を広く持つことに繋がります。また、日本にとどまらずグローバルに活躍する資質と専門性を養うためにも文化的知識は必要不可欠です。各業界各分野の情報や知識を身に着けるためには、専門性の高い論文や研究ノートなどが掲載されている学術誌・学術雑誌を参考にされるとよいでしょう。生活や服飾、美容関連の学術雑誌には、どのようなものが発行されているのでしょうか。
家政学の学術雑誌まとめ
人の生活と環境の相互作用について研究し、衣・食・住に関わる知識を学び、生活の質の向上や福祉への貢献に役立てる学問を家政学と言います。家政学にまつわるおすすめの学術雑誌について紹介します。
日本家政学会誌
「日本家政学会誌」とは、一般社団法人 日本家政学会から年12冊発行されている学会誌です。本学会は1949年に家政学研究の進歩と発展、そして生活の充実と向上に貢献することを目的に創設された学術団体となります。学会誌の論文内容として、家政学にまつわる原論や経営、食物、被服、住居、家族、児童、教育など幅広い分野に渡っています。2020年に発表された71巻5号では、サツマイモの葉と葉柄と採取時期の関係や、清涼飲料水の摂取が食事摂取量に与える影響などについての論文が掲載されており、読み物としても充実した学会誌になっています。
家政学研究
「家政学研究」とは、奈良女子大学家政学会が10月と3月の年2回発行している学会誌です。家政学研究では、新しい価値・事実・認識があると認められた未発表の報文や論説、限定された発見や新しい実験事実や知見を含む研究ノートなどが発表されています。2019年3月までで第130号まで発刊されており、その内容も多岐に渡っています。第130号では、子供に関わる条例や居場所づくりについて、自治体の少子化対策などに関する報文が掲載されており、また研究紹介ではビタミン栄養が卵母細胞に与える影響について、建築材料の研究などに触れられています。一方で第129号になると江戸時代の酒造業の発展についての論説が発表されており、年代を問わず興味が持てる内容となっているのが特徴です。
https://www.nara-wu.ac.jp/life/hea/kenkyu.html
家族関係学
「家族関係学」とは、一般社団法人日本家政学会 家族関係学部会が発行している部会誌です。本部会は1980年に日本家政学会の専門部会として創設されたもので、衣・食・住に加えて経済や家族といった人々の生活に欠かせない構成要素について研究・発表の場を設けています。特にこの家族関係学では、集団としての家族、および生活者としての個人について、生きるための人間関係のあり方や取り巻く生活環境の条件など興味深いテーマの研究について論究されています。社会学や心理学、法律学などの観点からも学びがありますので、家政学を知るのにふさわしい学術雑誌と言えるでしょう。
http://www.kazokukankeigaku.jp/contents/journal-info.html
家政学原論研究
「家政学原論研究」とは、日本家政学会 家政学原論部会により年1回刊行されている部会誌です。1978年のNo.11まで「家政学原論研究会会報」、1999年のNo.33までは「家政学原論部会会報」と名前を変え、2000年のNo.34から現行の「家政学原論研究」として発表されています。家政学とはどのような学問なのかを知るのにおすすめの学術雑誌となっており、その本質や定義、体系について詳しく紹介されています。2019年刊行の53巻では、家政学原論部会が実施した夏期セミナー・シンポジウムについても掲載されています。
生活科学に関する学術雑誌まとめ
生活科学とは家政学を源流として、人々の生活を自然科学や人文科学、社会科学などを応用させて研究する学問です。生活科学を学ぶことで、自分たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、生活科学を知るために役立つ学術雑誌も多く発行されています。
生活社会科学研究
「生活社会科学研究」とは、お茶の水女子大学の生活科学研究会により1994年から刊行されている会誌です。本研究会は生活社会科学講座の教員や卒業生、学生などで構成されており、毎年生活社会科学について最新の話題をテーマにシンポジウム・講演会などを開催しています。会誌はオンラインでも公開されており、17号以降はお茶の水女子大学リポジトリTeaPotからPDFファイルでダウンロードもできます。第26号では、親の介護を行う中年期シングル介護者についての論文などが掲載されています。
http://www.hles.ocha.ac.jp/ug/humanlife/soc/society/index.html
生活科学研究誌
「生活科学研究誌」は、大阪市立大学大学院 生活科学研究科が発刊している研究誌です。発刊は原則年1回であり、現在までvol.16まで発表されています。生活科学関連の総説や論文が掲載されており、新しい価値のある結論や事実が認められる研究内容となっています。女子中学生のダイエット行動に関する記述や、血圧コントロールに関する食生活改善についての論文など、若い世代にも受け入れられるような内容が豊富に詰まっています。
https://www.life.osaka-cu.ac.jp/publications/thesis/
「食生活研究」誌
「食生活研究」誌は、食生活研究会から年6回発行されている隔月誌で、奇数月30日に発行されている学術雑誌です。B5版60ページで構成されており、原著論文や短報、資料、総説、解説などが掲載されています。食生活全般の研究について書かれており、ほか食物史や調理学、栄養学から食品材料、貯蔵、食品分析・実験、食品衛生に至るまで幅広い分野についての解説が載っています。食生活は人の生活に深く関わりますので、様々な情報収集に役立つ雑誌となっています。
http://syokuken.org/request.html
生活環境学に関する学術雑誌
生活環境学とは、人の生活と取り巻く環境について理解するための学問です。生活環境とは何かを知るためにわかりやすいと定評のある学術雑誌について紹介します。
生活環境学研究
「生活環境学研究」とは、武庫川女子大学大学院生活環境学研究科他より刊行されている教育・研究誌です。暮らしの中にある物や空間、事柄と人との関わりについて、生活文化や歴史的観点を含めて学んだ研究結果などについて掲載されています。2013年に発表された第1号から2019年の第7号まで、武庫川女子大学リポジトリ・武庫川女子大学学術成果コレクションにて公開されています。第7号では、ニューヨークのフォレストヒルズガーデンや3Dバーチャルフィッティングについて、また町づくりやオールドニュータウンなど、幅広いテーマで書かれた論文が掲載されています。
https://www.mukogawa-u.ac.jp/dai/human/index.html
人間と生活環境
「人間と生活環境」は、人間-生活環境系学会から発行されている機関誌です。年に2回刊行されており、その内容は原著論文、技術報告をはじめ、短報や総説、資料などで構成されています。前身である生体調節研究会が1967年に発足したことが本学会のはじまりで、発足以来熱環境系シンポジウムなどが開催されています。第17回から人間-熱環境系から現在の人間-生活環境系に拡大され、垣根を超えた分野の研究者が集うシンポジウムへとボリュームを増しています。身近な生活環境について、衛生、住居、生理、被服など多方面における研究結果を知ることに繋がります。
https://jhes-jp.com/blog/journal/
環境社会学研究
「環境社会学研究」は、環境社会学会が1995年から発行している機関誌です。本学会の活動目的である「社会科学の発展と環境問題解決への貢献」のために、環境社会学の研究成果の発表と交流の場として活用されています。年1回秋に刊行されており、発行から2年が過ぎているものに関してはJ-STAGEにて公開されていますので、誰でも無料で閲覧できます。
栄養クリニック紀要
「栄養クリニック紀要」は、武庫川女子大学リポジトリ・武庫川女子大学学術成果コレクションに公開されている学術雑誌です。2011年には12・13号合併号が、2011年には14号が発表されています。内容については、武庫川女子大学栄養科学研究所の栄養クリニックやいきいき栄養学講座について、他にも食や栄養について幅広いテーマに沿っての記述が掲載されています。肥満や食生活改善についても様々な論究がされていますので、年齢を問わず読み応えを感じる雑誌となっています。
服飾学に関する学術雑誌まとめ
服飾学とは、衣・食・住の「衣」について、文化や歴史、役割や機能など、幅広く研究が行われる学問です。服飾に関する興味をお持ちの方も多いと思いますが、楽しく学べるおすすめの学術雑誌を紹介します。
国際服飾学会誌
「国際服飾学会誌」とは、国際服飾学会から年に2回発行されている学会誌です。日本語をはじめ、英語や韓国語、中国語などの論文が掲載されています。本学会は1982年9月に日本・海外の服飾研究と服飾学の発展を目的に発足、学術雑誌や会報誌の発行や、シンポジウムや総会などを行っています。2020年にはNo.56が刊行されており、商家の晴着や19世紀イギリスのパターン、ラオスで行われた国際学術交流会についての内容になっています。
http://iaoc.world.coocan.jp/?page_id=51
日本衣服学会誌
「日本衣服学会誌」とは、日本衣服学会から発行されている学会誌です。前身は衣服研究会であり、第1巻は1957年(昭和32年)に発表されていますので、学会誌としてはかなり古くから刊行されている歴史ある学会誌と言えます。現在は60巻以上発刊されており、オンラインジャーナルJ-STAGEからチェックすることができます。
http://saas01.netcommons.net/jacs/htdocs/gakkaishi/
服飾学研究
「服飾学研究」は、21世紀の新しい認識の「衣」に携わる学会を目指し2000年に設立された服飾文化学会から刊行されている学会誌です。最新号は2018年発行のvol.1 No.1で、民族芸能の番楽の翁衣装や幕末・明治の女性の和服についての論文が掲載されています。服飾文化の研究やファッションの発展と流行についてなど、日本、海外を問わず世界中の衣に関する記述が数多く掲載されていますので、興味がある方は学会誌の内容について公式ホームページから確認してください。
http://www.fukushoku-bunka-gakkai.jp/05.html
生活・服飾・美容に関する学術雑誌は分野ごとで学ぶ
人々の生活に欠かせない生活・服飾・美容について研究を行う学問には、家政学をベースに、生活科学や生活環境学、服飾学などがあります。生活の質を高めるとともに、今現在自分の生活やその周りの環境について、より造詣を深めたいという方は、学術誌や学術雑誌の購読がおすすめです。数多くの学術雑誌が学会や大学の研究会などから発行されており、その多くは研究結果を広めると同時に、研究分野の発展を目指し、研究者の交流の場として活用するためのものです。特に興味がない分野でも、人の生活と深く関連していることもあります。様々な学術雑誌を参考に、自分を取り巻く環境や文化について知識を深めましょう。